肺がん

肺の構造と機能

肺は胸腔内にあり、左右一対で存在します。さらに肺は5つの肺葉から成り立っており、右肺は上葉、中葉、下葉の3つの肺葉、左肺は上葉、下葉の2つの肺葉に分かれています。また、肺は酸素を取り込み、いらなくなった二酸化炭素を排出する重要な役割を担っており、生命の維持に必要な臓器です。

肺がんとは

肺がんとは、肺の中にある空気の通り道である気管支やガス交換の場である肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものです。初期には発生した場所で増殖しますが、その後、周囲の組織へ浸潤したり、がん細胞が血液やリンパの流れに乗って他の臓器に広がったりします。

肺がんの疫学

最新がん統計によると、がんで死亡した日本人は2020年に378,385人(男性 220,989人、女性 157,396人)であり、肺がんに関しては、2020年の死亡者数は75,585人(男性 53,247人、女性 22,338人)で、全体と男性ではがん死亡原因の1位となります。女性でも大腸がんに次いで2位となります。
香川県でも2019年には、男性435人(男性がん死亡全体の25.2%)、女性157人(女性がん死亡全体の12.7%)が肺がんで死亡しています。

肺がんの分類

肺がんは組織型によって、腺がん、扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がんなどに分類されます。治療の効きやすさや進行速度の違いから小細胞がんとそれ以外の非小細胞がんに大別されます。

肺がんの症状

肺がんの症状には、咳、痰、血痰、胸の痛み,動いた時の息苦しさなどがありますが、病変の場所や大きさによっては症状がほとんど出ないこともあります。症状のみから肺がんを診断することは不可能です。また、場合によっては特異的な症状が出ることがあります。症状が長引くなど気になる場合は早めに医療機関を受診してください。

肺がんの診断

診断を確定させるには、肺の病変から組織の一部を採取して、顕微鏡でがん細胞の存在を確認する必要があります。検査の方法として、手術中に採取する以外に、喀痰細胞診、気管支鏡検査、CTガイド下肺針生検などがあります。

喀痰細胞診 痰の中に出てきたがん細胞の有無を確認します。
気管支鏡検査 細い内視鏡を気管、気管支へ挿入して細胞や組織を採取します。
CTガイド下肺生検 CTで確認しながら、針を体の表面から病変部に刺し込み、細胞や組織を採取します。

肺がんの病期(ステージ)

治療方針の決定のためには、がんがどのくらいの範囲に広がっているか(病期)を確認することが重要です。
具体的には、肺の原発巣の大きさや広がり、リンパ節転移、遠隔転移の状況により病期(ステージ)が決められます。

Ⅰ期 原発巣が小さく、リンパ節転移がない
Ⅱ期 リンパ節転移がないが、原発巣がやや大きい。またはリンパ節転移が原発巣と同じ側の肺門にとどまっている。
Ⅲ期 原発巣が周囲の重要な臓器に及んでいたり、リンパ節転移が広範囲に広がったりしている。
Ⅳ期 脳、肝臓、骨、副腎などに転移している。あるいは胸水がたまり、その中にもがん細胞がみられる。

肺がんの治療法

肺がんの治療方針は、肺がんの組織型、病期、患者様の年齢や体力、ご自身の希望などによって決められています。
治療には外科治療、放射線療法、薬物療法、緩和ケアがあります。

非小細胞肺がんの治療方針

Ⅰ・Ⅱ期 標準治療は外科治療です。ただし、外科治療に耐えられない状態の場合や患者様の希望によっては放射線療法が実施されることもあります。外科治療後に薬物療法を実施することが勧められる場合もあります。
Ⅲ期 標準治療は多くの患者様では放射線療法と薬物療法の組み合わせ、化学放射線療法です。一部の患者様では外科治療が勧められることがあります。
Ⅳ期 標準治療は薬物療法と緩和ケアです。

小細胞肺がんの治療方針

小細胞肺がんでは治療方針を決めるにあたり、上記の病期とあわせて,「限局型」と「進展型」に分類します。限局型は病変が片側の肺に限局し、リンパ節転移が反対側の縦隔リンパ節や鎖骨上窩リンパ節に限られているなどの条件を満たす場合であり、進展型は限局型の範囲を超えて広がっている場合です。

限局型小細胞肺がん 標準治療は外科治療と術後の薬物療法、薬物療法と放射線療法を組み合わせた治療です。
進展型小細胞肺がん 標準治療は薬物療法と緩和ケアです。

肺がんの手術

標準的な手術はがんが発生している肺葉を切除し、転移の可能性が高いリンパ節も切除(郭清)することです。病状や患者様の年齢や体力によっては、小さく切除したり(楔状切除、区域切除などの縮小手術)、逆に大きく切除したり(拡大切除)することもあります。

胸腔鏡下手術

従来は皮膚を大きく切開し、肋骨の間を器械で開いて行う開胸手術が主流でしたが、最近は皮膚の切開を小さくして胸腔鏡という棒状のビデオカメラを肋骨の間から挿入してテレビモニターで観察しながら行う胸腔鏡下手術が主流となっています。
小切開創からの観察を併用する胸腔鏡補助下手術とテレビモニターの観察だけで手術を行う完全鏡視下手術があります。

放射線療法

放射線をあて、そのエネルギーでがん細胞を損傷、死滅させる治療法です。周囲の正常組織も損傷されますが、可能な限り病変に集中して照射することで正常組織への損傷や全身的な影響を少なくします。

薬物療法

抗がん剤(細胞障害性抗がん薬),分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬があります。抗がん剤は従来から用いられている治療薬であり、がん細胞を直接攻撃します。分子標的治療薬はドライバー遺伝子変異や融合遺伝子を有する非小細胞肺がんで用いられ、がん細胞の増殖を効率的に抑えることができます。また、がんの血管新生を抑えることで、がん細胞の増殖を抑える薬剤もあります。免疫チェックポイント阻害薬はがん細胞が免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みを解除する治療薬です。

緩和ケア

患者様やそのご家族様の、体や心などの様々な辛さ(不安や痛みなど)を和らげ、自分らしく過ごせるように支えていく医療です。

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