肺がんとは

肺の構造と機能

肺は胸腔内にあり、左右一対で存在します。さらに肺は5つの肺葉から成り立っており、右肺には上葉、中葉、下葉の3つの肺葉、左肺には上葉、下葉の2つの肺葉があります。また、肺は酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するといった呼吸を司っており、生命の維持に必要な臓器です。

肺がんとは

肺がんとは、肺の中にある気管支や肺胞から発生する悪性腫瘍の総称です。肺がんは、初期には肺で腫瘤を作りますが、大きくなると周囲の臓器へ浸潤し、痛みを伴う様々な症状を引き起こします。さらに進行すれば、あらゆる臓器へ転移し、最終的には呼吸不全を含めた様々な臓器不全にて死に至ります。

肺がんの疫学

厚生労働省の発表による人口動態統計(概数)では、がんで死亡した日本人は平成22年に353,318人(男性 211,322人、女性 141,996人)と、初めて35万人を超え、全体の死亡数(1,197,066人)に占める割合は29.5%となりました。
肺がんに関しては、平成22年の死亡者数は69,778人(男性 50,369人、女性 19,409人)で、全体と男性ではがん死亡原因の1位となります。女性でも大腸がん(20,314人)に次いで2位となります。
香川県でも平成17年には、男性416人(男性がん死亡全体の24.5%)、女性147人(女性がん死亡全体の14.9%)の方が肺がんで亡くなられています。

肺がんの分類

肺がんは組織型により、小細胞がんと非小細胞がんに大別され、非小細胞がんは、さらに、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどに分けられます。
小細胞がんは、非小細胞がんより悪性度が高く、早期より転移することが多いため、手術では治癒することが難しく、治療の中心は化学療法や化学放射線療法となります。
一方、非小細胞肺がんは、化学療法や放射線療法の効果が低いため、治癒を目指すためには、早期に発見し、手術によってがんを取り除くことが一番と考えられています。

肺がんの症状

肺がんは初期には特に症状はみられませんが、ある程度進行すると、咳、血痰、胸痛などがみられるようになります。また、場合によっては特異的な症状が出ることがあります。肺尖部に浸潤した癌などはレントゲンにて発見することが難しく、腕や肩の疼痛、瞳孔の縮小、顔面発汗の停止などがみられ、整形外科などを受診して、発見が遅れることもあります。
さらには、小細胞がんなどにおいて、がんが特殊なホルモンを産生することにより、筋力低下、高血糖、脱水、嘔気、意識障害などを伴うことがあります。

肺がんの診断

がん細胞の存在を証明する必要がありますが、実際にはしばしば困難です。主には、喀痰細胞診、気管支鏡検査、CTガイド下肺生検、リンパ節生検などがあります。
喀痰細胞診:痰の中のがん細胞の有無を確認します。
気管支鏡検査:太さ5〜6mmの気管支鏡を使って、気管支から細胞や組織を採取し、がん細胞の有無を検査します。
CTガイド下肺生検:CTで目標を確認しながら、針を病変部に命中させ組織を採取し、がん細胞の有無を検査します。
リンパ節生検:首のリンパ節が腫れている場合に、リンパ節に針を刺したり、外科的に切除して、がん細胞の有無を検査します。

肺がんの病期(ステージ)

治療方針の決定のためには、がんがどのくらいの範囲に広がっているか(ステージ)を確認することが重要です。
具体的には、肺の原発巣の広がり(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)の組み合わせでステージが決められます。一般的には、I期からIIIA期までが、手術の対象となります。

IA期 T1a / T1b N0 M0
IB期 T2a N0 M0
IIA期 T1a / T1b N1 M0
T2a N1 M0
T2b N0 M0
IIB期 T2b N1 M0
T3 N M0
IIIA期 T1a / T1b N2 M0
T2a N2 M0
T2b N2 M0
T3 N2 M0
T3 N1 M0
T4 N0 M0
T4 N1 M0
IIIB期 Any T N3 M0
T4 N2 M0
IV期 Any T Any N M1a / M1b

具体的には、
T1a:原発巣の大きさが2cm以下
T1b:原発巣の大きさが2cmを超え3cm以下のもの
T2a:原発巣の大きさが3cmを超え5cm以下のもの
T2b:原発巣の大きさが5cmを超え7cm以下のもの
T3:周辺臓器への浸潤があるもの、原発巣の大きさが7cmを超えるもの
T4:重要臓器(心臓、椎体、気管、大血管など)への浸潤があるもの
N0:リンパ節転移なし
N1:同側肺門部リンパ節転移
N2:同側縦隔リンパ節転移
N3:対側縦隔リンパ節転移、鎖骨上リンパ節転移
M0:遠隔転移なし
M1a:対側肺の結節、胸膜播種
M1b:肺以外への遠隔転移

肺がんの治療法

肺がんの治療方針は、肺がんの組織型、病気、患者さんの年齢や体力によって決められています。

非小細胞肺がんの治療方針

非小細胞肺がんは、抗がん剤(化学療法)や放射線療法が効きにくいので、治癒を目指すためには、手術が必要です。
手術の対象となるのは、主にはI 期からIIIA期までの患者さんとなります。
肺がんの標準的な手術は、肺葉切除と周囲のリンパ節切除(郭清)でありますが、病状や患者さんの年齢や体力によっては、部分切除や区域切除といった切除範囲の小さな手術(縮小手術)や、周囲の臓器(肋骨や血管など)を合併切除するといった大きな手術(拡大手術)を行うこともあります。
IIIB期の患者さんでは、化学療法と放射線を組み合わせた治療を同時に行うことが標準的な治療になります。
IV期では、化学療法のみの治療となりますが、病状によっては症状の緩和を目的とした放射線療法を行うこともあります。

小細胞肺がんの治療方針

小細胞肺がんは、非小細胞肺がんより、放射線や化学療法が効きやすく、発見時にはすでに全身への転移がみられることが多いため、ほとんどの患者さんで手術以外の治療が行われることになります。
小細胞肺がんでは治療方針を決めるにあたり、大まかに2つに分類します。具体的には、がんが放射線療法の出来る範囲(片方の肺から鎖骨上リンパ節まで)にとどまっているI期からIII期までの場合(限局型、LD)と、もしくはそれ以上に広がっているIV期の場合(進展型、ED)に分けられます。
限局型(LD)では、化学療法と胸部放射線療法の同時併用を行いますが、I期に限っては手術を行うこともあります。また、完全寛解に至った場合は、脳転移のリスクを下げるため、予防的全脳照射も行います。
進展型(ED)では、一般的に化学療法のみを行います。

胸腔鏡手術

当科では、肺がん手術での患者さんの負担の軽減を目指し、積極的に内視鏡による手術(胸腔鏡手術)を行っております。具体的には、胸に3〜4カ所程度、内径12mmのポートと呼ばれる細い筒を肋骨と肋骨の間に留置し、ポートから内視鏡(胸腔鏡)や特殊な手術器具を胸の中に挿入して、内視鏡からの映像をテレビモニターで見ながら、肺などを切り取る手術を行います。今まで行われてきた通常の開胸手術(30〜40cm程度の傷で、肉眼で行う手術)に比べると、傷が小さく、入院期間も短くなりました。
以上、一般的な肺がんの診断や治療法などについて紹介させて頂きましたが、必ずしも個々にあてはまるものではなくケースバイケースであることより、疑問点やご質問などがございましたら、外科を受診して下さるようお願いいたします。

臨床病期 非小細胞肺がん 小細胞肺がん
IA期 手術 手術+化学療法(+放射線療法)
IB期 手術(+化学療法)
IIA期 手術+化学療法 化学療法+放射線療法
IIB期
IIIA期
IIIB期
手術+化学療法
化学療法+放射線療法
化学療法(+放射線療法)
IV期 化学療法 化学療法