当院は、職業に関連する疾病の予防から治療、リハビリテーション、職場復帰に至るまでの総合的な医療及び勤労者の健康確保のための活動(勤労者医療)を推進しています。疾病と職場環境等に関するデータを蓄積し、職業性疾病の予防、早期発見、治療から健康の保持・増進に至るまで、勤労者の職業生活を治療と就労の両面からサポートしています。
また、平成26年度から労災病院全体で、勤労者医療の新たな取り組みとして、治療就労両立支援モデル事業(がん、糖尿病、脳卒中の罹患者様及びメンタルヘルス不調者に対し休業等からの職場復帰や治療と就労の両立支援への取り組みを行い、事例を集積し、医療機関向けのマニュアルの作成・普及を行う事業)を開始しており、当院はがん罹患者様の治療就労両立支援モデル事業に参加しています。
労働者健康安全機構では、従前からアスベスト関連疾患に係る特殊健診、診断及び治療等に取り組んでまいりましたが、平成17年6月にアスベストばく露による健康問題が表面化し、政府の閣議決定(平成17年7月)に基づく「アスベスト問題への当面の対応」(アスベスト問題に関する関係閣僚会合とりまとめ)を受け、アスベスト関連疾患の診断・治療の中核となる医療機関として、25労災病院に「アスベスト疾患ブロックセンター」「アスベスト疾患センター」を設置し、産業保健総合支援センターとともに、積極的にアスベスト関連疾患への取組を実施しています。
当院では、平成17年9月1日にアスベスト曝露者、アスベスト関連疾患者様を対象に、地域医療機関と連携しながら健康相談、健康診断、診断・治療を行うとともに、労災指定医療機関等の地域医療機関への支援を一貫して行うことを目的に「アスベスト疾患センター」を設置しました。
当院は、香川県よりアスベスト関連疾患に関して、他の医療機関を支援する第三次医療機関として指定されています。
(参考)労働者健康安全機構のアスベスト疾患への取り組み
独立行政法人労働者健康安全機構は産業活動に伴い、依然として多くの労働災害が発生している疾病、又は産業構造・職場環境等の変化に伴い、勤労者の新たな健康問題として社会問題化している疾病について、平成25年度まで13分野の課題に対してモデル医療やモデル予防法の研究・開発、普及に取り組んできました。
平成26年度からは、労災補償政策上重要なテーマや新たな政策課題について、時宜に応じた研究に取り組むために、3つの分野に集約化して新たなテーマを設定し、研究を行っています。
平成26年度から取り組んでいる3分野9テーマの研究は以下のとおりです。
研究テーマ名 | 研究・開発、普及テーマ |
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1.腰痛 | 社会福祉施設の介護職員における腰痛の実態調査、診断のと予防対策
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2.運動器外傷機能再建 | 運動器外傷診療の集約化による治療成績向上と早期社会復帰を目指した探索的研究 |
研究テーマ名 | 研究・開発、普及テーマ |
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3.生活習慣病 |
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4.作業関連疾患 | 手根管症候群患者様と作業内容(種類や期間など)との関連に関する研究 |
5.就労支援と性差 |
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6.睡眠時無呼吸症候群 | 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断と治療に関する研究 |
研究テーマ名 | 研究・開発、普及テーマ |
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7.外傷性高次脳機能障害 | 従来の画像検査では検出できない高次能機能障害の病態解明とその労災認定基準に関する研究 |
8.じん肺 |
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9.アスベスト |
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平成25年度まで取り組んできた13分野は以下のとおりです。
製造現場や建設現場等で多発する四肢の損傷のうち、手指切断、開放性骨折等緊急手術が必要なケースについて、神経接合を図るマイクロサージャリー(手術顕微鏡装置)等専門的な機器等による高度な医療が必要な分野。
職場での転倒・転落、交通事故等による頸椎・せき髄損傷は、脊椎・泌尿器科・リハビリテーション専門医、看護師、理学療法士等の専門スタッフの横断的、総合的な医療が必要な分野。
騒音作業による難聴、VDT作業による疾患、溶接、炉前作業等の紫外線・赤外線や通信業務等のレーザー光線等による眼疾患などが多数発生しており、エキシマレーザー等専門的な機器等による専門的な治療と、的確な検査・治療方法の研究開発が必要な分野。
高温環境下での熱中症、物流現場における凍傷、高圧作業による潜水(潜函)病、放射線物質取扱現場での放射線障害等は、専門的な機器・設備による複数の診療科にわたる総合的な診断・治療等が必要な分野。
職業性腰痛症や頸肩腕症候群等は、物流、介護、オフィス等多数な現場で依然多数発生しているが、その要因は多岐にわたり、また悪化・再発を繰り返すことが珍しくないことから、適正な療養管理と労災保険給付の観点からも、的確な診断方法の開発、職場の作業態様に応じた専門的な治療と予防策の確立、普及が必要な分野。
林業はもとより、建設業、製造業等でも依然多数発生しているが、加齢等の影響等未解明な点も多く、また療養が長期化する実態にあることから、適正な療養管理と労災保険給付の観点からも、一層有効かつ的確な診断・治療方法の研究開発が必要な分野。
化学物質による中毒症、がん等は、55,000種類以上の既存の多数な化学物質に加え、新規化学物質が次々と生成されることから、様々な職場、職域で発生する可能性があり、近年ではシックビル(シックハウス)といった事務系職場での問題の発生もみられるなど、これらの生体への影響分析と専門的な治療が必要な分野。
粉じんを発散する職場・業務は、セラミックス製造、金属切断・研磨等多数あり、じん肺及び肺がん等合併症は依然として多発しているが、じん肺は初期診断が難しい疾病であり、症例の集積を活用し、専門的な診断・治療と一層有効な診断・治療方法の研究開発とともに、全国の専門医の育成に貢献することが必要な分野。
高血圧・糖尿病等の生活習慣病を抱える勤労者が業務の過重負荷により、脳・心臓疾患を発症し、いわゆる過労死に至るケースが増えており、社会問題化。血管内の手術等専門的な機器等による専門的な治療と、症例の集積に基づいて業務と脳・心臓疾患との因果関係等を分析し、予防策の確立、普及が必要な分野。
労働環境の変化に伴い、強い不安やストレスなど、業務による心理的負荷で精神障害を発症する勤労者の増加、3万人を超える自殺者など、勤労者のメンタルヘルス対策(心の健康問題)は喫緊の課題。的確なカウンセリングなど職場状況を踏まえた専門的な治療と、精神障害の予防、診断、職場復帰、再発防止策に関する研究開発が必要な分野。
女性の職場進出の拡大に伴い、職域の拡大、夜勤・交替制等勤務形態の多様化などが女性勤労者の健康に及ぼす影響を研究・解明し、女性が安心して働くことができるよう複数の診療科による医療面のサポートが必要な分野。
円滑な職場復帰を図るため、それぞれの患者様の障害の状況、職場での作業内容等に対応した職場復帰プログラムに基づくリハビリテーション医療が必要な分野。
これまで勤労者予防医療センター及び勤労者予防医療部で行ってきた予防医療活動に加え、平成26年4月から、新たに治療と就労の両立支援の取組を開始するため、「勤労者予防医療センター」及び「勤労者予防医療部」を、それぞれ「治療就労両立支援センター」「治療就労両立支援部」と改称し、以下の活動に取り組むこととしています。
当院の属する「独立行政法人労働者健康安全機構」においては、これまで「患者様」と「病院(医師、MSW等)」と「企業(産業医等)」の3者間の情報共有を通し、両立支援コーディネーターが中心となって患者様を介する形で職場に対する両立支援のアプローチを行ってきました。
今後は、今までの取組に加えて、「両立支援相談窓口」を設置し、治療を受けながら仕事を続けたい患者様やその御家族、事業場の担当者からの相談対応を実施していくこととしております。
具体的には、当院の両立支援コーディネーターが産業保健総合支援センターのスタッフ等と連携を図り、
を行います。
相談日 | 毎週木曜日 13:00-17:00 |
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場所 | 香川労災病院1階 両立支援相談窓口(総合案内・患者様相談窓口内) |
相談対象者 | がんなどの疾病に罹患している患者様(労働者)、事業者、人事労務担当者、事業場の産業医、保健師、産業保健スタッフ等 |
勤労者の健康確保を図るため、過労死(脳・心疾患)、勤労女性特有の健康障害等の発症予防及び増悪の防止に関する予防医療活動を通じて、事例の集積、集積した事例の分析・評価により、効果的な予防法・指導法を開発するための調査研究を実施します。
平成26年度から新たに、がん、糖尿病、脳卒中の罹患者様及びメンタルヘルス不調者に対し休業等からの職場復帰や治療と就労の両立支援への取組を行い、事例と集積し、医療機関向けのマニュアルの作成・普及を行うこととしています。