1.はじめに
香川労災病院(以下「当院」)は、病院の理念に基づき、患者の皆様及び医療従事者に質の高い、安全な医療を提供することを目的とし、医療関連感染対策に取り組むための基本的な考え方を本指針で定める。
医療関連感染とは、医療施設において患者及び医療従事者が原疾患とは別に新たに罹患した感染症を言い、通常入院後48時間以降に発生した感染症を指すが、外来及び入院直後であっても、明らかに医療に関連して発生したものに関しては、医療関連感染という。
感染管理の対象者は、入院及び外来患者や面会者、当院職員や委託職員及び派遣職員などの医療従事者、臨地実習学生、ボランティア、院外関連企業職員を含む、当院にかかわりのある者全てである。
2.感染管理に関する基本的な考え方
当院における感染管理は、病原体の保菌及び感染状態と易感染状態の患者が混在しているという急性期病院である当院の特徴から、科学的根拠に基づいた標準予防策を基本に、病原体の伝播を未然に防止するための感染経路別予防策を講じる。感染症発生の際には、拡大防止のために、その原因の速やかな特定と制圧につとめ、早期の終息を図る。感染管理の実践のため、医療従事者は、香川労災病院感染管理マニュアル(以下「マニュアル」)を把握し、それを遵守する。
3.感染管理のための委員会及びその他の医療機関内の組織に関する基本的事項
- 設置
感染管理の周知徹底および実践を迅速に行うため、当院の各部門からの代表者で構成する組織横断的な委員会等を下記のとおり設置する。
- 感染管理委員会(以下、ICC;Infection Control Committee)
- 感染管理チーム(以下、ICT;Infection Control Team)
- 抗菌薬適正使用支援チーム(以下、AST;Antimicrobial Stewardship Team)
- 口腔ケア・LUTSケア
- 運営
- ICCは院長の諮問機関であり、検討した諮問事項は院長に答申され、施行する。また、決定事項は運営会議で周知する。
- ICTは、ICCの下部組織の実践チームであり、組織横断的に活動する。
- ASTは、ICCの下部組織の実践チームであり、組織横断的に活動する。
4.感染管理のための医療従事者に対する研修に関する基本方針
- 感染管理の基本的な考え方及び具体的方策について、医療従事者に周知徹底を図るため、研修会を開催し、感染管理に対する意識向上を図る。
- 感染管理研修会として、医療従事者を対象にICTにて年2回以上、ASTにて年2回以上の研修会を開催する。
- 必要に応じて、部署単位あるいは全職員に対し研修会を開催する。
- 研修会の結果は記録に残す。
5.感染症の発生状況の報告に関する基本方針
当院の日常的な感染症の発生状況を把握するシステムとして、各種のサーベイランスを実施し、その結果を感染管理に生かす。
- 耐性菌サーベイランス
- 特定の菌種において、感受性パターンの状況をモニタリングする。
- 対象限定サーベイランス
- 中心静脈カテーテル関連血流感染/手術部位感染/人工呼吸器関連肺炎/尿道カテーテル関連尿路感染について、対象となる部署、期間等をICTで検討し、実施計画の立案・実施・評価を行う。
- 結果について対象部署へフィードバックし、ICCへ報告する。
- 針刺し・切創/皮膚・粘膜暴露サーベイランス(職業上発生する感染性物質の暴露)
- 針刺し・切創/皮膚・粘膜暴露の職員に対し感染防止策を講じた上で、事例発生の状況を把握し、評価を行う。
- 結果についてICCへ報告する。
6.医療関連感染発生時の対応に関する方針
- 各種サーベイランスデータから、日常的な感染症の発生動向を超える状況をいち早く特定し、制圧の初動体制を迅速に取れるよう、感染にかかわる情報管理を適切に行う。
- 医療関連感染発生を認知した部署は、直ちにICTに連絡し、ICTは部署の管理者とリンクナースを中心とした職員とともに、速やかに発生原因の究明と改善策を立案し、実施する。
- ICTによる週1回の院内ラウンドを実施し、感染対策の実施状況の把握や指導を行う。
- 感染症多発(以下、「アウトブレイク」)と判断した場合、初動の対処ならびに患者様への対応等を病院長および感染管理委員会に報告する。状況によっては、院長を本部長とした対策本部を立ち上げ、迅速に院内及び各方面に対応する。
- 届出の必要な感染症について、法に基づいて届出を行う。
7.感染症治療に関する基本指針
- 抗MRSA薬および広域抗菌薬など指定抗菌薬については届出制をとり、投与期間・投与量の把握を行う。
- 感染症患者や指定抗菌薬長期使用患者について、ASTによる院内ラウンドを週1回行い、抗菌薬の適正使用を推進する。