血液・リンパ

血液のがんとは

血液のがんとされる病気は一般の方には耳慣れない病名が多いですが、主なものでは白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などがあります。それぞれ特徴的な臨床像があり、治療法も異なります。

白血病

白血病は急性白血病と慢性白血病に分かれます。白血病と言うと昔から映画やテレビドラマの主人公が侵される病気として登場しますが、これは急性白血病を指していることが多いようです。長期間続く発熱や出血症状などがあり、血液検査をして発見されます。急性白血病と診断された場合には、普通、ただちに入院加療が必要になります。急性白血病はさらに急性リンパ性白血病と急性骨髄性白血病に分かれますが、いずれも主な治療は化学療法(抗がん剤治療)になります。リンパ性と骨髄性では用いる抗がん剤が若干異なります。
化学療法の副作用としては、嘔気、嘔吐、脱毛、心不全、間質性肺炎、末梢神経障害、腸閉塞、感染症等があります。急性白血病は血液の病気であり、正常白血球や血小板が減少しているので、感染症と出血が命取りになることがあります。感染症は肺炎・敗血症が、出血は脳や肺の出血が怖い合併症になります。敗血症性ショックを起こした場合や、脳や肺に出血した場合、急変して数時間で死亡してしまうこともあります。急性白血病の化学療法は高度の骨髄抑制を来たし、白血球が非常に減少する時期があります。この期間が合併症を起こしやすい時期になり、1階の治療間隔をおよそ1ヶ月程度は空ける必要があります。数回治療を行うとすると、入院期間は半年程度に及び治療期間はそれより長くなる場合も、短くなる場合もあります。
白血病は血液以外の他のがんと比べると、抗がん剤が大変よく効く病気で知られています。抗がん剤がよく効けば治癒する可能性もあります。しかし、効果が乏しい場合は、進行が早く、短命に終わる場合もあります。一般に始めの治療の効果がない場合や再発した場合はその後の治療は難しく、予後は厳しいものとなるでしょう。

慢性白血病は急性白血病と違い、診断されてもただちに入院を要することは比較的稀です。慢性白血病にも急性白血病と同じように慢性リンパ性白血病と慢性骨髄性白血病があります。名前は少し似ていますが、全く異なる治療をする病気です。
慢性リンパ性白血病は比較的高齢者に多く、多くの場合無症状で、偶然の血液検査で発見されます。初期の場合は何も治療をせずに様子を見ることが選択されます。白血病という病名を聞いて大変驚かれる方が多く、また、何も治療しないという選択肢に混乱される方もいらっしゃいます。症状にもよりますが、あまりあわてる必要がないことが多い病気でもあります。白血球が急に増えてきたり、リンパ節が大きくなったりしてきた場合に化学療法が考慮されます。慢性リンパ性白血病の化学療法にはいくつかありますが、外来での治療が主になります。
これに対し、慢性骨髄性白血病はあらゆる年齢の方が発症する可能性がある病気です。慢性リンパ性白血病と同じく、普通、自覚症状はなく健康診断や偶然の血液検査で発見されます。この病気には10年ほど前に特効薬が開発され、治療方法が大きく変わった病気です。以前は、骨髄移植をしないと治療困難な病気でした。骨髄移植も若くないと実施できず、診断されてから平均余命4,5年とされていました。しかし、チロシンキナーゼ阻害薬と総称される新薬が10年程前に使用できるようになってから、5年始損率は90%程度に改善され、慢性骨髄性白血病で骨髄移植が必要な患者さんは非常に稀になりました。現在は、慢性骨髄性白血病に効果の高い薬剤は3種類発売されており、使用可能になっています。難点は長期間飲み続けなくてはいけないことと、薬剤が非常に高価で、経済的負担が大きいことです。

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫全身のどこかのリンパ節が異常に腫れてくる病気です。しかし、リンパ節以外の場所にできることもあり、頭から足の先までどこにでもできる可能性があります。一般的には首や太ももの付け根などのリンパ節の腫れに気付き、小さくならないため病院を受診して診断されることが多いようです。リンパ節の腫れは多くの場合、痛みなどはなく、相当大きくなるまでは症状がないのが一般的です。診断をするためには腫れたリンパ節を外科的に切除して、詳しく調べる必要があります。悪性リンパ腫は非ホジキンリンパ腫とホジキンリンパ腫に分かれます。非ホジキンリンパ腫とホジキンリンパ腫では必要とされる抗がん剤の種類が異なるため、治療を始める前に詳しく調べておく必要があります。悪性リンパ腫の治療はほぼ標準治療が確立されており、初めに詳しく調べて病型を決定した後、適切な治療法を選択する必要があります。
非ホジキンリンパ腫の標準治療は「CHOP療法」と言われる化学療法です。B細胞性リンパ腫の場合は、これにリツキサンと呼ばれる薬剤を追加して治療を行います。化学療法の有害事象(副作用)として、末梢神経障害、腸閉塞、便秘、感染症、嘔気、嘔吐、脱毛、心不全等があります。「悪性リンパ腫」はリンパの腫瘍であり免疫不全を伴う上に化学療法を行うので、感染症が致命的となる場合もあります。特に肺炎、敗血症等に注意を要します。化学療法は3~4週に一度、6~8回行われることが一般的です。その後、放射線治療を追加する場合もあります。
悪性リンパ腫は白血病と並んで抗がん剤がよく効く病気で、化学療法で治療する可能性もあります。通常、初回治療は入院で行い、後は外来で化学療法を継続します。
一般的な非ホジキンリンパ腫はこのような治療になりますが、非ホジキンリンパ腫の中でも低悪性度リンパ腫と呼ばれるリンパ腫や脳や鼻にできるリンパ腫は治療方針が異なります。低悪性度リンパ腫の場合はすぐ治療が必要になるとは限らず、無治療経過観察が選択されるばあいもあります。腫瘍量が多い場合は始めから化学療法が必要になります。また、病変が狭い範囲にある場合には放射線治療のみが選択される場合もあります。無治療経過観察が選択された場合には、腫瘍が悪化傾向になってから、化学療法が行われることになります。この他、専門的にはなりますが、脳や鼻のリンパ腫は一般的に使用される、CHOP療法では十分な効果が期待できないため、ほかの抗がん剤の組み合わせが選択されます。
ホジキンリンパ腫は日本人には比較的少ない病気とされていましたが、最近、少し増える傾向にあります。非ホジキンリンパ腫よりも若い年齢の方がかかる可能性があります。ホジキンリンパ腫の標準治療は「ABVD療法」と言われる抗がん剤の組み合わせが一般的です。これを2週間に1度繰り返します。ホジキンリンパ腫はあらゆる悪性疾患の中で最も、抗がん剤が良く効く病気の一つです。

多発性骨髄腫

多発性骨髄腫とは骨髄中の形質細胞という細胞ががん化した病気です。骨髄の中には様々な種類の細胞がありますが、形質細胞は、白血球の一種であるリンパ球から分化・成熟した細胞です。この細胞は、身体に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する作用を持つタンパク質(免疫グロブリン)を産生します。この病気になると、がん化した形質細胞から単一の抗体(Mタンパク)が多量に産生され、血液中に異常に増えます。また、その一部は尿中に排出されます。この病気は骨の中にある骨髄で、がん化した形質細胞が周りの骨を破壊しながら増えるため、全身の至るところの骨が弱く折れやすくなります。骨折が初発症状になり、最初に整形外科を受診される患者さんも多くいます。
治療は化学療法が主体になります。薬剤の投与は静脈注射か飲み薬で行われます。通常は2種類以上の抗がん剤を組み合わせて用います。その組み合わせ方法や量は、病気の種類や状態によって異なります。用いられる主な薬剤には、アルケラン、エンドキサン、オンコビン、アドリアシンなどと、ステロイド剤であるプレドニン、デカドロンなどがあります。これらの薬剤の併用療法であるMP療法、VAD療法などが行われます。その他、数年前に登場した新しい薬剤としてベルケイド、サレド、レブラミドなどがあります。一般に化学療法後には、吐き気、嘔吐、手足のしびれ、食欲低下などの副作用や、一時的な白血球や血小板の減少、貧血などが認められます。また、治療薬によっては脱毛もしばしば認められます。一般的な化学療法は、約半数以上の患者さんに有効であることが期待できます。この他、局所に放射線療法を行う場合もあります。
多発性骨髄腫は高齢の方に多い病気ですが、65歳以下の比較的若い患者さんを対象として、大量化学療法が行われることもあります。自分の赤血球や白血球の基になる造血幹細胞を採取、冷凍保存しておいて、大量の化学療法を行った後に血管内に点滴することにより、従来の化学療法を上回る成績も報告されています。ただし、年齢、臓器の働き、感染症の有無、化学療法の効き方などにより、対象となる患者さんは限られています。
ゾメタなどには、多発性骨髄腫の経過中に生じる骨折の発生率を低下させる効果がある薬剤もあります。同じ種類の内服薬もあります。
予後は病気の進行度や治療効果、腎障害の程度によって異なり、生存期間は数ヶ月から10年以上とさまざまです。診断後、直ちに治療が必要であるⅡ期/Ⅲ期の患者さんの半数以上が生存できる期間は3~4年前後とされています。約1/4の方に5年生存が期待できます。ベルケイド、サレド、レブラミド等の薬剤が使用可能になり、生存期間は以前より延びていると言われています。